ニュージーランド研修旅行報告

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悠声会関西支部
支部長伊藤文博

「喉頭摘出後リハビリテーションについての集学的アプローチ」での患者ゲストスピーチについて(報告)

<神戸大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科丹生健一教授の開催挨拶(抜粋)>
 このセミナーは、第39回日本頭頸部癌学会のサテライトセミナーとして開催するということでお話しさせていただいております。水曜日から始まりまして今日までこの学会をやっておりますが、どうしても我々耳鼻咽喉科医、頭頸部外科医というのは「喉頭を残そう、温存しよう」というところに一番注意が行き、学会の発表でもそういった内容がどうしても多くなっています。そして今度は、そういう治療をして再発してしまった方への手術が難しい、ということで工夫するお話はするのですが、喉頭摘出した後の患者様のお話にということになると、演題を募集してもなかなか出てこない、というのが現状です。
 今日、ご臨席されています神戸大学名誉教授天津睦郎先生のおっしゃっていることですけれども「医者はどうしても手術した後の喉頭摘出してからのことを考えていない。」そういう言葉にもありますように、そういうトピックスを扱えるセッションあるいはコーナーが必要じゃないか、と考えました。
 この講習会はちょうど昨年、がん研有明病院の川端先生が主催された第38回日本頭頸部癌学会のサテライト講習会として開催されたのが第1回でございます。
 ぜひ、今度は西日本でもこうした講習会を開催して、我々医師自身も勉強し、またできれば医療従事者のみなさん、そして患者さんにも知っていただこう、また、お互い意見を交換して、より良い医療を提供できるようにしていきましょうということで今回も開催させていただくことになりました。

1.開催日時 : 2015年6月6日(土)午後4時20分から午後5時の間

2.開催場所 : 神戸国際会議場501号室(医師、看護師、ST、患者会等約200名)

3.主 催   : 神戸大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科

4.司会者  : 齋藤 幹 医師(神戸大学医学部附属病院)
          佐藤雄一郎医師(新潟県立がんセンター新潟病院)
          福島 啓文医師(がん研有明病院)

  オブザーバー : Brian B.Burkey医師(Cleveland Clinic Foundation)
           : Corina van As-Brooks言語聴覚士(Netherlands Cancer Institute)

5.患者ゲスト : 悠声会副会長   岩瀬 俊男
          : 悠声会関西支部  藤井 哲夫
          : 悠声会九州支部長 口石 清人

6.司会者からの質問事項(抜粋)

<質問1>.自己紹介とシャント発声の情報をご存知でしたか?(齋藤医師)

岩瀬様 :
私は、慶応病院で喉摘手術をうけました。会社を経営している関係上、病院が、推奨する食道発声手法では、時間がかかりすぎて社長を交代しなければならない状況になるのでシャント発声を選択しました。
藤井様 :
大阪府立成人病センターで喉摘手術をうけました。同院の食道発声教室で6か月学びました。「あ」が発話できず、困っていたところ娘が、インターネットでシャント発声を検索してくれました。同院医療関係者に相談するとシャント発声は保険診療外で経費が多くかかりますとわれましたがシャント発声を選択しました。
口石様 :
私は、同時手術です。主治医から声が出るようにしてあげると説明を受け主治医にすべてを任せました。
始めは、プロヴォックスを留置しても発話ができませんでした。
「あ」が、発話できなかったので2年間、電気式人工喉頭で発話していました。(仕事の関係上、必要でした。)
和歌山県で2泊3日のコリーナ先生のカウンセリング会を受けて発声できるようになりました。2年間、発話できなかったのに2日で自分の名前が言えました。それからフリーハンズで発話しています。

<質問2>.リハビリをする時にリラックスする環境作りが必要だと考えていますがどんな状況が整っているとリラックスできますか? (佐藤医師)

岩瀬様 :
東京の悠声会では、月に一回亀井STを中心にカウンセリング会を併設して実施しています。病院内の訓練とカウンセリング会との訓練では、雰囲気がちがいます。
口石様 :
和歌山の泊まり込みカウンセリング会は、和室の真ん中で実施しました。心の余裕をもって臨めた環境でしたので和気あいあいとした雰囲気で話し合いができたので安心してしゃべれました。
(楽な雰囲気をつくること。)
同じSTでも病院内とカウンセリング会では雰囲気が異なります。

<質問3>.HMEカセットの使用感について教えて下さい。 (福島医師)

岩瀬様 :
私は、日中はフリーハンズ、夜間はノーマルHMEを使用しています。快適です。
藤井様 :
ノーマルで使用しています。咳や痰が少ないです。エプロンガーゼは、傷口が時々見えたりするし、痰が付着してエプロンガーゼがぱりぱりの状態になり見た目に嫌でした。
口石様 :
エプロンガーゼを使っていた時は、痰が多くて乾燥感がありましたが、
HMEカセットを使用してからは、呼吸が楽になりました。痰も少なく、保湿効果やほこりの侵入を防ぎ、肺機能を高めてくれる感じですし、体も楽になりました。
佐藤医師 :
HMEを使用した方は、重症の気管支炎症例は少なくなった。

<質問4>.嗅覚について、どのように対応していますか? (齋藤医師)

岩瀬様 :
悠声会では、毎月のカウンセリング会において亀井STが希望者を対象に水パイプ器具を使用した訓練をしています。私自身は健常時の6〜7割の嗅覚が取り戻せており、新規会員に指導も行っております。
毎月のカウンセリング会において希望者を対象で実施しています。
藤井様 :
私の嗅覚は、健常時の十分の一です。
嗅覚訓練については訓練不足です。
口石様 :
福岡のカウンセリング会では、水パイプで訓練しています。

<質問5>.プロヴォックスを留置して緊急事案はありますか?(齋藤医師)

岩瀬様 :
先日、ニュージーランドに行った時にニュージーランド在住の喉摘者に「病院が遠いので緊急時はどのよう対応しているか」質問すると、ニュージーランドでは、近くの言語聴覚士がプロヴォックスを交換してくれるそうです。
日本では、医師法が厳しいので欧米のような処理はできません。
齋藤医師 :
医師以外の医療従事者が医療行為できる法改正も将来考える必要がありますね。
佐藤医師 :
なるべく近くの耳鼻咽喉科の医師に交換してもらう体制をつくるのが良い方法ですね。

<質問6>.プロヴォックスの経済的問題について
        病院が赤字になると医療行為をしたくてもできない環境が生じる。(齋藤医師)

岩瀬様 :
厚生労働省に対して陳情活動を実施しております。平成26年4月から人工喉頭点数の見直しが決議されました。これからも患者様や病院に経済的負担がかからないように厚生労働省や市町村に対しても陳情活動を推進していきます。
(2015年6月現在、16都道府県53か所の市町村でHME(人工鼻)及び関連製品が日常生活用具として認定されました。)

<質問7>.アメリカ国内でHME(人工鼻)やプロヴォックス交換に保険は適用されますか?
        Brian B Burkey医師に対して質問です。(齋藤医師)

Brian B Burkey医師 :

アメリカ国内では、HMEやプロヴォックス交換に対しては、保険が適用されて費用はかからないです。
歯科医療の方が、保険適用がなく費用が必要です。

最後になりましたが、今回神戸大学医学部附属病院主催の「喉頭摘出後リハビリテーションの集学的アプローチ」で患者のゲストスピーチという発言の機会を与えてくれました神戸大学医学部附属病院丹生教授、齋藤医師、四宮医師・新潟県立がんセンター新潟病院佐藤教授・がん研有明病院福島医師、中島看護師・クリーブランドクリニックBrian B Burkey医師・オランダがんセンターコリーナ言語聴覚士の皆様に感謝いたします。
また、縁の下で暖かく支援して頂きましたアトスメディカル名優スタッフ一同にお礼を申し上げます。

以 上


(撮影:アトスメディカル名優株式会社)