悠声会台湾研修

悠声会台湾研修 「中華民国無喉者復声協会との交流会メモ」

時　期：　2014年5月20日（火）15：15～16：45
場　所：　県立がんセンター新潟病院　会議室
参加者：　台湾側：

中華民国無喉者復聲協会　黄　東源　理事長　他会員多数
台北護理健康大学　言語障科学研究所　教授兼所長　盛　華　先生
その言語聴覚学科の学生多数、
台灣港建股?有限公司　陳　雅宣　（理事長の義娘）
通訳　程　永佳
悠声会側：
土田会長、高野、若月、嘉村、平田、長瀬、大山、西堀、松村、鈴木、
山口、江上、谷地夫妻、
アトスメディカル　ヨアキム（アジア地区営業部長）、板垣社長、金﨑ST、加賀美

中華民国無喉者復聲協会　黄　東源　理事長　のご挨拶
日本からわざわざ来て頂いて交流が出来　歓迎します。
まず、台湾側の協会の説明をします。この会は28年間続いている会で私は今年で15年間携わっております。週に1回の教室を行っております。会員が入会後はその人毎に話し方の練習や家庭での協力や仕事が出来る様に指導しております。若い方は2ヶ月位で食道発声が出来る様になる人が居ます。3ヶ月で喋る呉さんも今回参加しております。彼は2週間で第一声が出て今では30語位は一気に喋ります。また、8年前に全摘をされた74歳の沈さんは長い間努力してスピーカーマシン（タピアの笛）にて今では仕事をされて居ります。先生を紹介します。
台北護理健康大学　言語障科学研究所　盛　華　所長のご挨拶
先程ご紹介頂きましたが　副学長は既に辞めており　研究所の所長をしております。人工鼻は知っておりますが台湾ではほとんど普及しておりません。日本でのお話しを聞きたいです。無喉頭発声の協会としてはこの会が台湾で唯一の会です。始めは数名でしたが　現在では台北、台中、台南それぞれ支部があります。喉頭摘出者の交流と情報交換をしております。今回はリハビリの勉強をしている将来のSPの学生を見学につれて来ておりますのでよろしくお願いします。
悠声会　土田会長からご挨拶。
私自身は始めての台湾訪問ですが空港からの移動中でも漢字が同じですので　安心感があります。台湾の会員さん方が大変上手にしゃべられるのを聞いてびっくりしております。
私自身は11年前に喉頭全摘手術を受け2年間食道発声を勉強しましたが　どうしても話が出来ませんでした。それで電気喉頭（EL）を使っていました。3年後に海外研修でロンドンでの交流会で流暢に長々と喋る方が大勢いてどうしてか分かりませんでした。食道発声ですとせいぜい数語ですので。それで帰国後に色々と調べてシャント発声法があることを知り8年前にシャント発声用のプロヴォックスを入れて喋れる様になりました。気管と食道の間にシリコン製のパイプ（補装具）を入れて肺の空気で新声門を振動させて喋ることが出来ます。この発声法では術後に直ぐに喋れる様になるメリットがありますが　少々お金が掛かるデミリットがあります。なお、フリーハンズと言う器具を使えば健常者と同様に両手をフリーにして喋ることが出来ます。今回参加メンバーの数名にそれぞれ話をして貰います。
高野：私は皆さんと同様に食道発声にて喋っております。よろしくお願いします。
若月：東京から来ました。2年前にシャントの手術をしてラリボタンとフリーハンズで話をしております。それ以前は食道発声でしたが　どうしても声が小さくなかなか会話が難しかったですが　これにしてから生活の幅が広がり良かったです。
松村：プロヴォックスを入れて4年ですが私は全摘手術と同時に入れましたので、20日間入院しておりましたが、退院時には「どうもお世話になりました」と普通に喋る事が出来ておりましたので　話せない辛さを経験しておりません。
谷地：空腸移植の下咽頭癌の手術を受けて居ります。食道発声は難しく出来ませんでした。プロヴォックスは1年前に入れましたが、まだ下手ですが喋り始めるとすんなりと声が出る様になります。
山口：始めは食道発声でしたが上手くゆかずダメでプロヴォックスを入れて2年です。メンテに手間が掛かります。私の場合は痰が多くてべースプレートが剥がれ易いです。
平田：プロヴォックスを入れて4年で　大体半年は持ちます。アドヒーシブは4～5日は持ちます。喋る事に多少お金が掛かろうと喋れることには変えられません。
時間が押しているので　悠声会からはここで挨拶は終わります。
ここから黄理事長からの質疑に対して土田会長からの応答

Q:

プロテーゼ（補装具　プロヴォックス）は　毎日交換が必要ですか？

A:

人によって違いますが、大体3～4か月毎の交換です。

Q:

脱落の可能性はありませんか？

A:

脱落が在った事は聞いたことがありません。

Q:

消毒が必要ではありませんか？

A:

気管内にあるので　これ自体への消毒は必要ありません。

Q:

人工鼻は何の為にするのですか？

A:

健常人には鼻で温度・湿度・不純物混入防止がされますが　その役割を人工鼻でします。

Q:

アドヒーシブは接着材で皮膚が荒れませんか？

A:

使用当初は　皮膚が荒れる事はあります。でも使い続けると慣れて来て大丈夫になります。

ここで　研究所所長の先生からシャント発声の説明があり。英語ではTrachea Esophageal Puncture (TEP)と言ってUSA のインディアナ大学で開発された方法です。欧米では普及しており、台湾でも20～30年前には導入されました。この10年は政府が禁止しているので現在は台湾ではありません。器具も随分と改良されており　患者にとっても喋る良い方法ですので　今後患者団体とも協力して政府へ働き掛けをして行きたいと思います。台湾の患者の方へ一日も早く実現する様にしたいと思います。
授業があるので　先生と学生はこの時点で退席

Q:

水等を飲むと洩れないのでしょうか？

A:

パイプの中に一方向弁があり空気は気管から食道へ回りますが　食道側からは何も入り込まない様に出来ております。

Q:

日本では政府はどのくらいの補助を行っておりますか？

A:

日本ではこれは健康保険の対象になっており　政府からの直接の補助とは違います。

Q:

脊椎の３，４，５番目が損傷して麻痺している方がおりますが　その方がしても発声が出来ますか？

A:

その辺りはお医者さんに直接聞いて頂かないと　我々には分かりません。

Q:

肺に感染症の患者が居ますが　その方がこれをして喋れますか？

A:

おそらく自力呼吸が出来て居られれば発声は可能と思いますが　これもお医者さんに聞いて頂かないとハッキリとは分かりません。
ここで教室の時刻となったのでお土産の交換をして　集合写真を撮ってお開きとなった。

PS:　交流会終了後　黄　理事長からご本人が十数年前の東京に40日間滞在して銀鈴会　中村正司会長から指導を受け　食道発声が出来る様になったとのこと。