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公益財団法人大阪成人病予防協会からの支援のもと、シャント発声講習会を開催致しました。シャント発声の実際や社会的問題点を医師から、リハビリの方法・重要性について言語聴覚士から、さらに、実際にシャント発声を獲得した3人が体験談を口演し、参加した多くの方々と活発な意見交換を行いました。

「大阪・多根総合病院・シャント発声法講習会」報告書
(公益財団法人大阪成人病予防協会支援事業)

1.開催日時:令和2年2月23日(日)13:00〜16:00

2.開催場所:大阪市西区九条南1−12−21 多根総合病院 4階会議室

3.参加者  出席者:医療従事者及び喉頭摘出者と家族(子供含む)
         内訳
         医師2名、看護師12名、言語聴覚士2名、栄養管理士1名、医学部学生1名
        薬学部学生1名 小計24名 喉頭摘出者と家族 小計20名          合計44名

4.内容

@ 鈴木会長より挨拶、代用発声の患者会について

A 多根総合病院耳鼻咽喉科、天津医師より、喉頭摘出に伴う失声、様々な代用発声の違い、シャント発声について

B 佐藤言語聴覚士より、代用発声獲得へのリハビリについて

C 悠声会会員の自身の体験、代用発声獲得への道のりについて

D 天津医師より、喉頭摘出者に関わる社会的問題について

【鈴木会長の挨拶】
 本日、公益財団法人大阪成人病予防協会のご支援を頂き、「シャント発声法講習会」を開催できたことは、大変ありがたく思っています。
 はじめに、悠声会の成り立ちについて紹介をいたします。
2007年に東京のがん研有明病院内で患者さんや患者さんの一部の家族さん、同病院の医師や看護師さん、言語聴覚士さんらが集まって喉頭摘出者の患者さまに何か役に立つことはできないかと会合を持ったのが始まりで現在に至っています。
 2015年東京都から認定NPO法人の資格を頂き、悠声会の活動がやっと全国的に認められました。会員数は、全国で約250名です。首都圏地域に会員が多く集まっていますが、支部は、北海道地区・千葉・東海地区・関西地区・九州地区等にあり活動しています(関西地区は約30名の会員が在籍しています)。
その他の活動として地域ごとの拠点病院において医療従事者と患者との交流会を開催して密接な連絡を取り生活情報を交換しています。

【天津医師より】

  1. 本会の趣旨
    大阪成人病予防協会から多根総合病院医院長宛に患者団体活動支援の募集案内がありました。悠声会の皆様にシャント発声について多くの方々に知っていただくための講習会の開催を提案したところ、快諾を頂きました。悠声会の皆様と、多根総合病院のスタッフとで協力して本会を開催します。

    趣旨は次の2つです。

    @ 言語聴覚士、看護師、さらに今後医療現場で活躍を期待される医療に携わる予定の医学生に、喉頭摘出による音声喪失、代用音声の獲得の重要性、シャント発声の社会的認知の問題について理解を深めて頂く。

    A 現在シャント発声をしている方々、喉頭摘出後で今後シャント発声を希望されている方とご家族を対象として、シャント形成後の留意点などの理解を深めて頂く。

  2. 講演概要

    • 喉頭の役割と発声のしくみ
    • 喉頭がん治療における喉頭全摘術
    • 喉頭摘出に伴う失声、合併症
    • 喉頭摘出後の代用発声である、食道発声・電気式発声・シャント発声等の各長所と短所
    • ボイスプロステーシス留置手術について(手術ビデオ供覧)
    • シャント造設によるトラブルについて
      シャントからの漏れ、誤嚥性肺炎、食道脱落、シャント感染、肉芽
    • 喉頭摘出者に対する新型コロナウイルスの予防対応策について

【株式会社アトスメディカルジャパン佐藤先生(言語聴覚士)から】

【悠声会会員から、ご自身の言語機能喪失の苦労、代用発声獲得への道のり、思いなどについてのスピーチ】

  1. T.Mさん(78歳・男性)
    医院を開業している間に喉頭癌を発症。喉頭摘出を余儀なくされ、電気喉頭を用いていた。
    その後、ボイスプロステーシス留置術を受け、シャント発声を獲得し、現役の医師として日常診察に従事されている。

    『2002年、声がかすれて声がでない症状が出たので、耳鼻咽喉科の専門医を紹介してもらいました。診察結果は、「がん」でしたが、初期に発見したので放射線治療で完治しました。
    私は酒飲みで、お酒を続けていたのですが、2015年7月に呼吸が苦しくなり、不安を感じて診察してもらった結果、下咽頭部分に「がん」があると診断されて喉頭全摘手術(遊離空腸再建)を受け失声しました。
     大学病院の発声教室で電気喉頭を使った発声法を3ヶ月程で習得しましたが、もっといい声で会話できたらと思い悩みながら生活をしていました。その後、ボイスプロステーシス留置術を受け、シャント発声法に切り替えました。
    2019年2月からフリーハンズで会話できるようになり医師の仕事を続けています。日常診察では、耳の遠い患者さまもいますので、時には、看護師さんに助けてもらって診察しています。今は、毎日、毎日が楽しく明るく過ごしています。』

  2. F.Sさん(62歳・男性)
     喉頭摘出手術後、代用発声にシャント発声法を選択された。フリーハンズを用いながら、自身でもより良い発声方法を工夫して、職場復帰して現役でお仕事を続けられている。

    『2011年4月に食道がんと下咽頭がんが同時に見つかり、食道がんの手術を最初にして、後に下咽頭がんの手術で喉頭全摘手術(食道再建)を受けました。1年6ヶ月ほど失声して過ごしていました。
     食道発声は、2ヶ月程習いましたが「あ」ではなく「か」がかすかに言える程度で、役には立たなかったです。
     その後、電気喉頭を使用して職場復帰しましたが、1年半声が出なかったことで会社の人から不要という声が聞こえてきたので、これはどうにかしないと思いながら過ごしていたところ、定期検診の時にたまたま「シャント発声法」で会話されていた患者さんから「シャント発声法」という代用発声法があることを教えてもらって決心しました。ボイスプロステーシス留置術後、2日目で声が出るようになりました。
     退院時は、主治医や看護師さんに「どうも ありがとう」と挨拶して退院しました。退院時に看護師さんからシャント発声のカウンセリングをしている患者会を紹介してもらい、参加するとスマホで会話している患者さんを見て感動して、その方を目標にして頑張りました。
    今ではスマホで会話できます。職場復帰もしました。
     指でのど元を押さえると大きな声もでます。マイクなしでも、大きな声がでます。
    同窓会でもカラオケに行きます。声が出ないときに病院に付き添ってくれた家内のおかげです。』

  3. Y.Kさん(63歳・男性)
    2019年に喉頭全摘出術を受け、その後、喉頭摘出者の患者会を通してシャント発声を知った。2019年12月にボイスプロステーシス留置術を受け、術後数日置いたのちに最初の発声練習で、食道発声よりスムーズなシャント発声ができた。
    現在、シャント発声のリハビリ中。孫とも会話できるようになり、現役で仕事も続けられている。
     『シャント発声の手術を受けて2ヶ月経ちました。これが2ヶ月目の声です。
    まだ、先にお話されたお二人の方に比べると聞きづらいと思います。昨年6月に全摘手術(遊離空腸再建)を受けて失声しました。
    大変、残念なことは全摘手術を受けた病院で食道発声のことは教えてもらいましたが、「シャント発声」のことを教えてもらえなかったことです。
    私なりに色々調べてシャント発声があることを知り、ボイスプロステーシス留置術をしている病院にたどり着きました。医師から喉頭がん等で手術した方が集まる悠声会という会合でしゃべれるようになることを教えてもらいました。
    同じような悩みで声がでない方がたくさんおられるのですが、医療関係者の方には是非、シャント発声法を広めて頂きたいと思います。もっと、もっと広めてもらったらもっと早く患者さんが社会復帰できると思い、本日、お話をした次第です。』

【天津医師から、シャント発声法の普及のために】

  1. シャント発声法の社会的認知について
    他院で喉頭全摘出後に、当院でボイスプロステーシス留置術を施行した10例のシャント発声を知った経緯を調べた結果、インターネットからが4例、患者会から3例、医師から2例、入院先の看護師から1例であり、シャント発声法について医師からの情報提供がない場合もあることがわかる。インターネットや患者会からの情報の重要性が再認識される。
  2. ボイスプロステーシス、シャント発声法の対応施設について
    悠声会ホームページ、「新しい声と生きる」p186〜p194に詳しく記載されています。
    大阪でもボイスプロステーシス留置、交換が可能な病院が掲載され、以前より増加している。
  3. 本日、参加された皆様に
    喉摘者の伴侶・友人・子供、医師、看護師、言語聴覚士、医療スタッフが力を合わせて情報を共有してシャント発声法を伝え、広めていくこと、特に、喉摘者とその家族が自身の体験を世の中に伝えていくことも重要です。

 <おわりに>
 悠声会関西支部として、今後も多くの方を対象としたシャント発声についての講習会を企画したいと考えています。

(悠声会関西支部支部長 伊藤文博 記)
以 上

(撮影 2020/2/23   大屋直樹)