|
|||||
|
|||||
頭頚部悪性腫瘍等の手術によって声帯を含む周辺組織を取り出す事を云う。 喉頭の全てを摘出すること。 喉頭の1/4を温存して手術する方法で、声帯は摘出するものの、温存された喉頭を使って発声が可能である。術後気管孔を閉鎖するので入浴や水泳等は従来通り可能。ただし誤嚥が 発生し易く、一定の誤嚥防止訓練が必要。 喉頭にできた腫瘍の発生部位や進行のぐあいによって、喉頭を部分的に切除することがある。この場合は、声帯の一部が残っているので、傷がよくなり喉頭瘻(こうとうろう)がふさげるようになれば発声は出る。
わが国で1年間に食道癌にかかる人はおよそ9000人と言われている。これは胃がんの10分の1の発生頻度。男性に多く、女性の6倍となっている。60歳代の方が最も多く、患者さんの平均年令は約64歳。 悪性腫瘍の注1)リンパ行性転移に対する処置としてリンパ節を切除する外科的治療法 注1)リンパ行性転移 原発巣においてその浸潤過程でリンパ管に侵入してリンパ流にのり、原発巣に近いリンパ節(所属リンパ節)に転移巣を作り、リンパ流にそって体内に腫瘍細胞が運ばれていく。原発巣から離れたリンパ節にも転移巣を作る。リンパ行性転移は肉腫にはおこらず、癌に多い移転形式。この原発巣からのリンパの流れには順番があり、センチネルリンパ節という原発巣に近い部位のリンパ節を検査する考え方が普及しています。 喉頭部分に発症する悪性腫瘍・・・詳細は後述。 咽頭がん (上咽頭・中咽頭・下咽頭) 咽頭部分に発症する悪性腫瘍で、発症部位によりその症状・性質が異なる。 甲状腺は頸部の正面下方に、喉頭(のどぼとけ)につづく気管を取り巻くように、位置する。蝶のような形でサイロキシンという全身の細胞の新陳代謝に関与するホルモンを分泌する。ここに発生する甲状腺がんは4種類の組織型別に、頻度、悪性度、転移の起こり方などにそれぞれ特徴がある。 喉頭は、気管と鼻をつなぐ器官なので、これが失われるとノドの部分で、空気の通り道は切断されてしまうことになる。そこで、首の付根中央に孔をあけて気管とつなぎ、この孔から肺に直接空気が出入りするようにする。この孔が「永久気管孔」。喉頭全摘後は、鼻ではなく永久気管孔を通して呼吸するようになる。そして、声も失うことになる。一度開けた気管孔は二度と塞ぐ事ができないので、永久気管孔と呼ぶ。 喉頭は、気管と鼻をつなぐ器官なので、この鼻を通して呼吸できないので、鼻の上部にある嗅覚が余り機能しない。しかし訓練によってある程度の機能回復を図る事が可能。 手術そのものの影響で味覚が低下する場合もある。加えて前述のような嗅覚低下に伴う味覚への影響もあるので、積極的に嗅覚回復訓練をして「食の臭い」に関する機能回復のみならず「味覚向上」も図りたい。 ▪ ガス洩れ・火災等の危険のシグナルとなる「におい」を嗅ぎ取るのが不得手となるので、その自覚を持ち続ける事はとても重要である。イザと言う時のためにもご家族や同居人の方の理解を得ておこう。 口から取り入れた空気を食道に留め、その空気を吐き出す際、食道の振動により音声を生み出す。「ゲップ」状の音が作られ、食道発声に発展させる事ができる。習得できると手を使わずに発声ができ、メンテナンス不要、且つコストもかからず、喉摘者はまず取り組む発声法。ただし、誰でもが必ずこの方法を習得できるわけではないのが残念。 (気管食道シャント=TracheoEsophageal shunt TEとは気管(Tracheo)と食道(Esophageal )の両方を表す略語であり、シャントはその両方をつなぐ通路(バイパス)を指す。食道発声が口から取り入れた空気で食道を振動させて発声するのに対し、永久気管孔から取り入れた空気を肺呼吸でシャント経由で食道を振動させて発声するのかTEシャント発声法。 「ElectroLarynx(電気式人工喉頭)」の略。 この器具を顎の下にあて、口内で振動音を作って音声を生み出す方法。 長所・・・習得が簡単で音量があり、体力のな い喉摘者でも疲れない 短所・・・音声に抑揚が少なく機械的音色な ため、人によっては違和感を覚える と共に障害者の意識がついてまわ る。また、ELを持つ片手がふさがり 両手を使う仕事に支障がある ■パイプ式人口喉頭(器具が大きい) 気管孔と口をパイプでつなぎ、パイプの中にはゴム膜が入っていて、呼気によってその膜が振動して音声となる。 長所・・・音声は比較的明瞭で習得は容易 短所・・・恰も楽器のようで器具が大きく丸見 えで、片手を使用する ヴォイスプロテーゼの食道側に一方通行の弁があって、肺から吐き出した空気がその器具の通路を通って気管側から食道側に流れる時に食道が振動、音声を発する働きをする喉摘者向け医療用日用具。 ※TEシャント発声法参照
食物を噛み砕き、口→咽頭→食道→胃へと食べ物を送り込む、一連の流れを云う 鼻の穴の中で、鼻腔から咽頭までの空気の通り道を言う。嗅覚器を有し、匂いをかぎ分ける機能のほか、吸気の加温・加湿・除塵機能を有する。 真菌(白癬菌やカンジダ菌等のカビ)に対する薬のことで、症状に応じて外用剤・内服剤・注射剤が用いられます。ヴォイスプロテーゼ留置者でカンジダ菌繁殖の強い人は、医師の指導の下に使用することでシリコン製弁の耐久性が増して交換頻度が少なくなり、医療費の節約に繋がる。 ※必ず医師の処方を受ける事 洗浄用に用いられるベンジンは、工業ガソリンを規定した日本工業規格 (JIS) K 2201〜11991の号として定められている無色透明の液体。蒸留性状として、初留温度が30℃ 以上50%の留出温度が1100℃ 以下、終点温度が150℃以下と定義されている。 このベンジンを「シリコンジェル」の溶剤に使用する。 哺乳動物の体を構成する構造の一部で、気管側の最上部の喉頭にある、気管に食道からの食物が入り込まないようにする蓋上の組織。
咽頭(いんとう)と喉頭の意。口腔の奥から食道の入り口までを咽頭、咽頭の下から気管と食道に別れ」、気管に入る部分が喉頭。 頸部リンパ節転移に対しては手術が中心となる。右左どちらかの片側か、両側の頸部郭清術を行う。これは耳後部から鎖骨上の頸部のリンパ節を、脂肪に包まれたままの形で大事な神経や血管を残しながら切除するという手術。 5年生存率・・・
がんの発生した部位で多少違うが、T期では80〜90%放射線で治りU〜W期では65〜70%の5年生存率を示す。 (=ヴォイスプロテーゼの商品名=アトスメディカル社「スウェーデン」の製品) 留置したプロヴォックスやがて寿命(人によって、あるいは手入れの仕方によって)が来る。交換のタイミングは飲食時にプロヴォックスを通して液体が気管側に漏れ始めた時。漏れが生じると咳き込むのですぐ分かる。 (H・・・加温 M・・・加湿 E・・・交換力) 鼻としての機能(肺への加温・加湿・除塵)は、喉頭全摘手術以降その役割を終えます・・・鼻や口で呼吸できなくなる・・・しかし、このHMEで気管孔部を覆う事で、その機能の代替機能を回復する事ができるようになる。加えて、絶えずHMEを使用する事でQOL(生活の質)が向上する。咳や痰の減少、うつ状態・不安不眠・疲労感の軽減などのメリットがある。 永久気管孔に装着するシリコン状のカセットで、加湿・加温フィルターがカセット内に封入されている。このカセットの中心部を指で押さえると、良質の声を出す事が可能となる。 (標準「ノーマル」型と高流量「ハイフロー」型の2種類がある・・・当初はハイフローを使用し、慣れてきたらノーマルを使用する) 発声に際し手指を使わずに会話ができる。ハンズフリーHMEは気管孔に手を触れないため、外見上とても自然に会話ができるメリットがある。 ベースプレート(アドヒーシブ・・・) HMEカセットを気管孔に固定する粘着式接着具で、接着特性(皮膚へのダメージ緩和・強接着力・はがし易さ等)に応じた3種類がある。 (注)強く剥がすと皮膚も一緒に剥がれてしまい、繰り返すとベースプレートを貼れなくなるリスクが高まるので、ゆっくり丁寧に剥がす事
ベースプレートをはがした後に、皮膚に残った粘着剤を除去する液体。
粘着性テープやフィルム等の機械的刺激に対し、薄い保護膜を形成しを刺激を低減。加えてベースプレート(アドヒーシブ)の粘着性の維持を図る。 シリコンでできた液体接着剤で、気管孔の周りに塗布して使用する。スキンプレップより粘着性は高い。使用経験者によれば原液を溶剤で50%程度に希釈すると使い勝手が良いと言う。 皮膚の弱い方は、異常を感じたら使用を直ちに中止し、皮膚を休める必要がある。皮膚が正常に戻ったら再度使用して様子を見る。 菌類の増殖を防ぎ、ヴォイスプロテーゼの寿命を延ばす目的で使用するのがブラシ。歯磨きと同様の頻度でブラッシングするのが望ましい。 (注)菌類の増殖を抑制する手段として抗真菌剤(軟膏または服薬)を使用すると効果があるが、必ず医師の処方に従う事 ヴォイスプロテーゼを通して液漏れが生じた場合(製品機能の不具合や著しい低下等)、交換までに緊急避難対応として使用するもので、ブラシの柄を使って気管孔からヴォイスプロテーゼの入り口に差し込みむ。このプラグを使用している間は、シャント通路が塞がっているので会話はできないが、飲食が可能となり、飲食後にプラグを取り外せば、再度会話が可能になる。 入浴やシャワー時、気管孔に装着して、水滴が直接肺に入るのを防止する器具で、精神的に安心して入浴ができる。入浴に慣れれば気管孔に装着しているHMEカセットでもその代替は可能。 フリーハンズ使用に際し、ベースプレートの代替品として使用する器具で、皮膚が過敏な方や気管孔形状が原因でベースプレートが使えない方等が使用する。 ヴォイスプロテーゼ(=商品名プロヴォックス<アトスメディカル社製>)関連製品を輸入する国内唯一の代理店。 喉摘者に対し食道発声の指導を行い、早期社会復帰をサポートするNPO法人で、週3回の教室を開設、多くの喉摘者を食道発声習得のために実習指導している歴史ある団体。 喉頭全摘者は障害名を「喉頭摘出による音声機能障害(身体障害程度等級3級)」と認定され、申請により障害者手帳が発行される。 喉頭全摘の手術を受けると失声するので、高度障害状態と認定されて契約している生命保険・簡易保険・生命共済等の保険金(死亡保険金と同額=高度障害保険金)を被保険者本人が請求できて、受け取ることができる。 悪性腫瘍に伴う入院・手術では、各種入院特約及び医療保険契約は当然支払い対象(入院給付金・手術給付金)となるので、引き受け保険会社に請求しましょう TEシャント形成・ヴォイスプロテーゼ留置手術も手術給付金が支払われます TEシャント形成・ヴォイスプロテーゼ留置手術そのものは、疾病治療手術と言うより形成外科手術的色彩が強く、手術給付金の支払い対象外と思い込み易いので注意しましょう。給付金支払い対象になります。 Ø 以上の保険金・給付金は全て非課税扱いなので、税務署への申告は不要。 各市町村役場の障がい者福祉部門が窓口となり、その窓口を通じて以下のような各種助成を受けられる ▪ FAX ▪ EL(電気式人口喉頭) ▪ 携帯用スピーカー(ギガフォン等) ▪ 痰吸引機 ▪ その他・・・自動車取得税の減免・航空運賃割引・JR運賃割引・高速道路通行料割引・都営交通無料優待・バス運賃割引・公共美術館優待等があります。詳細は当該団体及び企業に確認のこと (医療費助成制度) 根拠法・・・平成18年10月1日から全面施行された障害者自立支援法。 ※自治体によっては更正としている ■身体障害者福祉法による更生医療の対象者 身体障害者手帳をお持ちの満18歳以上の方。ただし、区市町村民税(所得割)が年23万5千円以上の「世帯」の方は、原則として対象外であり、高額治療継続者(「重度かつ継続」)に該当する場合に限り、経過措置(平成24年3月31日まで)により対象となる。
■対象となる障害 臨床症状が消退しその障害が永続するものに限られます。 ▪ 視覚障害によるもの ▪ 聴覚、平衡機能の障害によるもの ▪ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害によるもの ▪ 肢体不自由によるもの ▪ 心臓、腎臓、小腸又は肝臓の機能の障害によるもの(日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるものに限る) ▪ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害によるもの(日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるものに限る) ■対象となる医療 当該障害に対して確実な治療の効果が期待できるものに限られる ▪ 眼科に関する医療 ▪ 耳鼻咽喉科に関する医療 ▪ 口腔に関する医療 ▪ 整形外科に関する医療 ▪ 形成外科に関する医療 ▪ 中枢神経に関する医療 ▪ 脳神経外科に関する医療 ▪ 心臓脈管外科に関する医療 ▪ 心臓移植に関する医療 ▪ 腎臓に関する医療 ▪ 腎移植に関する医療 ▪ 小腸に関する医療 ▪ 肝臓移植に関する医療 ▪ 歯科矯正に関する医療 ▪ 免疫に関する医療 ▪ 上記の医療に係る調剤 ▪ 上記の医療に係る訪問看護
※内臓の機能の障害によるものについては、手術により障害が補われ、又は障害の程度が軽減することが見込まれるものに限るものとし、いわゆる内科的治療のみのものは除く。
■手続方法 区・市にお住まいの方は、区市福祉事務所又は区市役所障害者福祉主管課に、町・村にお住まいの方は町村役場障害者福祉主管課に申請してくだい。
■必要書類 ▪ 自立支援医療費(更生医療)支給認定申請書 ▪ 自立支援医療(更生医療)意見書(概略書・見積り明細書等) ▪ 身体障害者手帳の写し ▪ 医療保険の加入関係を示す書類(受診者及び受診者と同一の「世帯」に属する方の名前が記載されている医療保険被保険者証等の写し) ▪ 「世帯」の所得状況等が確認できる書類(区市町村民税課税・非課税証明書等) ▪ 特定疾病療養受療証の写し(腎臓機能障害に対する人工透析療法の場合) ▪ ※申請書・概略書・見積り明細書等の様式は、区市町村の担当窓口にあります。 公費負担額及び自己負担額 1. 医療に要する費用。ただし、各種医療保険等を先に適用します 2. 介護保険法による訪問看護、訪問リハビリテーション、医療機関の通所リハビリテーション、介護療養施設サービスに要する費用(更生医療に関するものに限る。)。ただし、介護保険を先に適用します 医療費の原則1割及び入院時の食事療養・生活療養に係る標準負担額の負担があります。 ただし、「世帯」の所得や疾病等に応じて、自己負担上限月額が設定されます。 ※ 医療保険の加入単位(受診者と同じ医療保険に加入する方)をもって、同一の「世帯」として取り扱います。 ※ 区市町村民税の今年度課税額が前年度から大きく変わった場合や、御加入の医療保険が変わった場合は、自己負担上限月額が変わる場合がありますので、詳しくはお問い合わせください。 ■対象となる医療機関等
指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療) 問い合わせ先
お住まいの区市町村の担当窓口
日常生活用具とは、障害者が日常生活をしていく上で、その障害を軽減し、自立した生活を支援・実現するための用具のことです。 日常生活用具費制度とは、重度障害者に対し、自立生活支援用具等の日常生活用具を公費負担で給付又は貸与すること等により、日常生活の便宜を図り、その福祉を増進に資することを目的とする制度です。 日常生活用具給付の対商品は、次の3つの要件を満たすものとされています。 1. 安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの 2. 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し社会参加を促進するもの 3. 製作や改良、開発にあたって障害に関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活用品として一般的に普及していないもの 情報・意思疎通支援用具 点字器や人工喉頭などの、障害者(児)の情報収集、情報伝達や意思疎通等を支援する用 具 ■自己負担金 日常生活用具も1割負担が原則となりました。よって、障害者自立支援法が施行されてから、日常一般的な基準としては、購入価格の9割を公費負担で、1割を自己負担でということになります。 しかし、以前の制度からの名残で、品目によって基準額があり、その基準額の9割を公費で負担するという運用をしている市区町村も少なくありません。 また、個人の収入と公費負担額の関係などは、それぞれの自治体で運用が異なり、一様には解説できません。 詳しくは、地元の役所の障害福祉課に個別・具体的にお尋ねください。 ▪ 栃木県・・・栃木県喉摘会 ▪ 群馬県・・・群鈴会 ▪ 埼玉県・・・埼玉銀鈴会 ▪ 千葉県・・・京葉喉友会 ▪ 東京都・・・銀鈴会 ▪ 東京都「・・・八喉会 ▪ 神奈川県・・・神奈川銀鈴会 ▪ 神奈川県・・・横浜港笛会 ▪ 山梨県・・・山梨県喉頭摘出者福祉会 ※ 各地域食道発声訓練機関情報については、地元役場にお問合せ下さい NPO法人、(Nonprofit Organization) 特定非営利活動法人の略で、特定非営利活動促進法に基づいて特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、同法の定めるところにより設立された法人である。当悠声会も同法の認証を得て法人格を取 得する為に申請中です。 気管と食道を交通させる通り道(バイパス)を指す。この瘻孔部分ににヴォイスプロテーゼ(商品名・・・プロヴォックス)を留置する。
喉頭はいわゆる「のどぼとけ」(甲状軟骨先端)に位置しており、内面が粘膜でおおわれた箱のようなものです。喉頭の内腔は上前方は舌根(ぜっこん: 舌のつけ根)につながり、上から喉頭蓋、仮声帯、室、声帯、声門下腔に分けられ、下方は気管から肺へ続いています。声帯は左右一対で「のどぼとけ」のやや下に位置しています。声帯のある部分は声門と呼ばれ、それより上を声門上、下を声門下と呼んでいます。喉頭の背側(後方)には下咽頭と呼ばれる部位があり、こちらは食道へ続いています。喉頭は、左右の声帯の閉鎖と肺からの呼気により声帯を振動させる発声機能のほかに、喉頭全体の機能として空気の通り道(気道)の確保と、食物の気管内への流入の防御(誤嚥防止:ごえんぼうし)の機能を有しています。喉頭がんが進行するとこれらの喉頭の機能障害を引き起こします。 年齢別にみた喉頭(こうとう)がんの罹患率は、男性では50歳代から80歳代まで急激に増加します。女性でも年齢別の罹患率は高齢ほど高くなりますが、年齢による罹患率の増加は男性ほど顕著ではありません。罹患率、死亡率は、ともに男性のほうが高く、女性の10倍以上です。 喫煙および飲酒によって、確実に喉頭がんのリスクが高くなります。喫煙と飲酒はそれぞれが別々に、または双方が相乗的に働いて、喉頭がん発生のリスクを確実に高くします。その他、アスベストなどの職業性の曝露(ばくろ)との関連が指摘されています。 部位では、声門(声帯)に発生するがんが60〜65%を占め、声門上は30〜35%で 、声門下は極めて少なく1〜2%です。喉頭の内面は線毛上皮で気管に連続していますが、声帯だけは扁平上皮におおわれています。喉頭がんはほとんど扁平上皮がんですが、たばこ、酒などの継続的刺激が発がんに関与するといわれています。 喉頭がんも他のがんと同様に早期発見が非常に重要です。喉頭がん全体の治癒率は約70%と頭頸部がんの中でも高い治癒率ですが、早期に発見すれば音声を失うことなく治癒することが可能です。そのため最近では、喉頭がんの早期発見を目的とした音響分析による検診なども試みられています。 がんの発生部位により最初の症状は異なります。最も多い声門がんでは、ほぼすべての方に嗄声(させい:声がれ)がみられます。この嗄声は雑音の入った、ざらざらした、かたい声です。1ヵ月以上嗄声が持続する場合は、早急に専門医を受診することが大切です。がんが進行すると嗄声はさらにひどくなり、声門が狭くなって息苦しいなどの呼吸困難症状が現れてきます。同時に痰に血液が混じることもあります。 声門上がんの初発症状は、食物を飲み込んだときの痛み、いがらっぽさ、異物感などです。また、次第に耳に放散する痛みが出現してきます。がんが進行して声帯に広がると嗄声が出現し、さらに進行しますと声門がんと同様に呼吸困難などの症状を示します。声門下がんの場合は、進行するまで無症状であるため、発見が遅れがちとなります。 喉頭にがんなどの所見がなく嗄声が持続する場合は、甲状腺、食道の精密検査を行うことが大切です。 声門がんは頸部のリンパ節転移が少ないのに対し、声門上がんではリンパ節転移を多く認めます。まれに頸部リンパ節の腫(は)れが初発症状で病院を受診し、声門上にがんが発見されることもあります。これは、声門がんでは自覚症状が早期より出現するため、早期に発見される場合が多いことのほかに、喉頭の構造的特徴によると考えられます。 喉頭がんの診断は、耳鼻咽喉科を受診したときに行われる視診と、生検と呼ばれる病変の一部を採取して行われる組織診断により確定されます。視診は、口腔内に喉頭鏡という小さな鏡を入れて、「えーっ」、「いーっ」などの発声をしながら喉頭内を観察し、腫瘍性病変の有無をみますが、咽頭反射が強い(舌をひっぱられるとゲェーッとなる)など所見のとりにくい方には、鼻から細いファイバースコープを挿入して観察します。組織診断は施設により多少方法が異なりますが、咽頭、喉頭を局所麻酔剤で麻酔して咽頭反射を抑制した後、太いファイバースコープを用いて細かな部位まで観察し、次いで鉗子(かんし)により病変の一部を採取します。これを病理医が顕微鏡で見て、がんかどうかの診断を行います。病変の採取は全身麻酔下で行われることもあり、その場合には入院が必要です。組織診断は、通常1週間前後で結果が出ます。 がんの進行範囲を把握するためには、視診による直接的な観察の他に、レントゲン撮影による検査が必要となります。この検査は見えにくい部位、深部への進展の程度を判断する上で非常に有用です。頸部正面、側面撮影のほか、頸部の断層撮影、CT、MRIなどの検査を行います。 また、声帯の振動様式により喉頭の病気を診断する喉頭ストロボスコピーと呼ばれる検査を行うこともあります。 原発巣はがんの進展の程度により、1〜4の4段階に分類されます(T分類)。声門がんでは、T1はさらにaとbに分類されます。頸部リンパ節は大きさ、個数によって大きく0〜3の4段階に分類されています(N分類)。 通常は、T、Nと遠隔転移の有無(M分類)を総合判断して病期を決定します。この病期は4分類されています。 【I期】 がんが1亜部(喉頭とさらに小さい単位に分けたもの)にとどまっている状態。 【II期】 喉頭内の隣接亜部位まで進展しているが、喉頭内にとどまっている状態で、頸部リンパ節転移も遠隔転移もしていない。 【III期】 声帯が全く動かなくなったり、3cmより小さい頸部リンパ節転移を1個認めるが、遠隔転移はしていない。 【IV期】 がんが喉頭を越えて咽頭や頸部に進展する、頸部リンパ節転移が多発する、あるいは転移リンパ節が6cm以上となる、またはがんと反対側の頸部リンパ節に転移する、遠隔転移を認めるといった状態。 I、II期は早期がん、III、IV期は進行がんです。1997年の全国集計では、I期:40%、II期:24%と早期がんが過半数を占めています。 原発巣の治療は、 放射線療法 (体外から照射する)と外科療法が2本の柱となります。抗がん剤による化学療法は、喉頭を温存するために放射線療法、外科療法に先立って施行されるか、手術不可能な場合、再発で他に治療法のない場合などに行われてきました。しかし、最近は従来標準治療として喉頭全摘出が行われていた症例に対しても、放射線と多剤化学療法との同時併用治療を行い、喉頭の温存をはかる治療も行われています。 外科療法は、がんの原発部位の周辺だけを切除する喉頭部分切除術と、喉頭をすべて摘出する喉頭全摘出術に分けられます。多くの場合、喉頭部分切除術は早期がんに、喉頭全摘出術は進行がんに施行されます。放射線療法や外科療法でも治癒する可能性がある場合の治療の選択は、年齢、全身状態、職業などを考慮した上で、それぞれの治療の長所、短所を十分説明して決定します。頸部リンパ節転移に対する治療は、一側または両側の耳後部から鎖骨までの範囲のリンパ組織を含んだ部分を切除する頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)ですが、切除不可能な場合は放射線療法を行うことがあります。 原発巣の治療法は以下のとおりです。
(1) T1 •放射線療法 •喉頭部分切除術 •レーザー治療 ほとんどの場合放射線療法が行われますが、がんの存在部位、腫瘍型によっては放射線療法の効果がない場合もあり、最初から喉頭部分切除術が選択されることもあります。また、がんが限局している場合、レーザーによる切除が行われることがあります。 (2) T2 •放射線療法 •喉頭部分切除術 •喉頭全摘出術 (3) T3 •喉頭全摘出術 •喉頭部分切除術 •放射線療法 基本的には、喉頭全摘出術が第一選択の治療法です。しかし、放射線療法でも制御されるものもあり、まず放射線療法を行い、再発したときに喉頭全摘出術を行う方法もあります。 (4) T4 •喉頭全摘出術 (1) T1 •放射線療法 •喉頭部分切除術 がんの発生部位により、放射線療法の効果が異なりますので、その点を考慮して放射線療法か喉頭部分切除術を選択します。 (2) T2 •放射線療法 •喉頭部分切除術 •喉頭全摘出術 (3) T3 •喉頭全摘出術 •喉頭部分切除術 •放射線療法 声門がんと同様に、まず放射線療法を行い、再発したときに喉頭全摘出術を行う方法もあります。 (4) T4 •喉頭全摘出術 (1) T1 •喉頭部分切除術 (2) T2 •喉頭部分切除術 •喉頭全摘出術 (3) T3、T4 •喉頭全摘出術 放射線療法が第一選択の治療となるものはありません。がんが前方に限局しているものでは、喉頭部分切除術で制御できることもあります。声門下がんは症状が出にくいため、病院を受診されたときには進行しており、喉頭全摘出術を選択せざるを得ないことが多々あります。 放射線療法後の再発に対する治療は、喉頭全摘出術を施行することが最も安全な方法ですが、治療前と再発時の所見から喉頭部分切除術で制御できる場合もあります。 生存率は、通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。 ここに示す生存率は、これまでの国立がんセンターのホームページに掲載されていたものです。生存率の値そのものでなく、ある一定の幅(データによって異なりますが±5%とか10%等)をもたせて、大まかな目安としてお考えください。 がんの発生部位により治療成績は多少異なりますが、I期では放射線療法で90%以上治ります。I〜IV期全体では、65〜70%の5年生存率が得られます。 放射線療法は、音声の面からもほぼもとの声に回復して、よい治療法といえますが、後年照射部位に一致して二次がんが発生する場合もあります。喉頭部分切除では、切除範囲により嗄声の程度はまちまちですが、もとの声に近いものとなります。また、特に切除範囲が大きいときなどに誤嚥(ごえん:誤って気道に飲食物が流れる)を起こし、むせて食事がしにくいことがありますが、通常は一過性のもので、食べ方を工夫することにより改善されていきます。どうしても改善されない場合は喉頭全摘出術の適応となります。喉頭全摘出術では、もとの声が全く失われる(失声:しっせい)状態となります。もちろん、食道発声や電気喉頭の使用により、新しい音声を獲得することができます(詳しくは「 発声障害(失声) 」を参照してください)。食事については、喉頭全摘出後でも治療前とほぼ同等の食事摂取が可能です。
|