やはり咳、痰が多いという愁訴は両方の会で上位にあがりました。I.Aさんからお話がありましたように、痰は常に出ているもので健常者は知らず知らずに呑み込んでいます。手術前まではあまり目にすることがなかった痰は、やはり多いと感じてしまいます。喉摘者は気管と食道が別々になっているので定期的に処置しなければなりません。そして、痰はゼロになることはありません。しかし肺胞を大きくする呼吸方法をすると痰の量が減る事は確かなようです。息を大きめに吸いHMEカセットを押さえて息を止めると、肺胞が膨らみ肺のリハビリテーションになります。フリーハンズにしたら痰が減ったという方もいらっしゃるようです。フリーハンズにしても、就寝時には必ずHMEカセットを使用しましょう。
風邪をひきやすいと回答された方は○○会では10名、悠声会では1名のみでした。これは、気管孔をエプロンなどで覆っているだけとは違い、HMEカセットのフィルター効果でしょうか?プロボックス使用のメリットではないか?と考えているところです。
次に○○会では、入浴、洗髪が困難と7名が回答していましたが、悠声会では0名でした。シャワーエイドを使用することで入浴が楽しめるようになったというお話がよく聞かれます。これだけでもQOL(生活の質)はかなり上がっているのではないかと推測されます。
気管孔から出血しやすいや気管孔が狭くなりやすいといった回答も○○会には8名いましたが、悠声会では0名でした。気管孔トラブルの原因は不明とされていますが、清潔ではない指で押さえる時の刺激ではないかと報告している文献もあるようです。
しかし、においがわからないは依然とトップで、悠声会でも五位に鼻がかみにくい、九位に味がわからないがあり、鼻機能の低下は今後の課題だと考えています。
悠声会のHPにある嗅覚リハビリ補助器は中川さんが製作担当してくださいました。ありがとうございました。作り方の説明は別途掲載
します。
愁訴の順位は低いですが、便秘気味である 耳が遠くなった などが悠声会での少数派でしたが、解決法を上級者の方に聞いてみるのはいかがでしょうか?上級者になればなるほど、愁訴も少ないように思います。
例えば、HMEカセットを押すと、
@鼻をかめる。
Aうがいができる
Bふんばれる。
C辛いものを食べた時、鼻腔にとどまっている辛みを吹きだすことができる。
などがあります。
最後に食道発声の件ですが、悠声会では4名の方が少しできる・できるという回答をいただきました。シャント発声でコミュニケーションがとれるようになれば、まずOKです。しかし、万が一、何らかの理由でシャント発声できなくなった時のために(例えば飲食物が漏れてしまった場合やボイスプロテーゼの不具合時など)食道発声をバックアップ法として獲得できていれはばいいのではないか?という考え方もあります。シャント発声で一番困る問題はシャント孔に合併症がおこることです。ボイスプロテーゼの径はどのサイズもすべて同じです。ボイスプロテーゼのサイズはその長さの違いです。シャント孔に感染等がおこるとシャント孔が大きくなってしまうケースがあり、ここがボイスプロテーゼの径よりも大きくなってしまうと対処が難しくなる場合があります。
シャント孔の合併症は、前回お話した毎日のケアでかなり防ぐことができると信じています。毎食後ブラシがけをする。清潔に使用する。そして定期的にボイスプロテーゼを交換するといったことが大切です。次回のボイスプロテーゼの交換日は必ず覚えていてください。
今回のアンケートではこれ以外にも分析されるべきデータがたくさんありました。折をみて皆さんにお話ししていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
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