予兆

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「予兆〜」

                                                             H。Y

2009年4月末に声かすれが生じたが、風邪か?としか認識していなかった。

その後食事の際に多少喉に引っ掛かるような違和感を生じたので、近くの耳鼻咽喉科を受診した。

抗生物質とうがい薬を処方されたが、2週間たっても一向に改善しなかったので違う耳鼻科を受診した。

新たな耳鼻科の先生は鼻からの内視鏡観察で驚いた表情をし、呼吸困難になったらこのメモ「呼吸困難な場合は、早急に気道確保するように!」を救急隊員に掲示し、かつ早急に紹介する大学病院を受診するように!との事だった。

自分でも奇妙に思い、インターネットで声がすれ・食事の際の喉の痛み等で検索した。及び、兄に電話にて、親・親類等の病歴を確認し、喉頭・食道関連に問題があるのでは!と確信した。

 

「大学病院にての検査結果〜告知」

 096月初めに紹介されたH医療センターにて内視鏡検査・CT検査・血液検査・胃カメラ(食道がんの有無)等実施後主治医から、妻も立会のもとで下咽頭癌レベルV・N0であり手術にて喉頭摘出した方が良いと告知された。

 声はどうなるでしょうか?に対して主治医は、各種発声方法があるとの事で有明癌研にて手術したA調理師シャント発声のDVDを試写にて紹介してくれた。

 あの程度に回復する可能性があるのなら、喉頭摘出・シャントに賭けてみようとかすかな希望と勇気が湧いた。

 

「手術〜オオルリ会との出会い」

 20097月初めに、下咽頭喉頭頸部食道切除・永久気管孔造設・ 頸部郭清術・遊離空腸再建術を実施した。手術は約14時間、その後3日間のICUは大変な苦痛であった。

しかし病棟に戻って、初めて自分で歩いてトイレまで行った時に、人間って割とタフだな〜と思った。幸い?放射線・化学療法は実施していない。

 何日か鼻からの流動食の後、あんなに楽しみにしていた初めて食事で食べるのがこんなに大変な事なのか!と実感した。小さじ1口を何度も噛んで、恐る恐る飲み込んでが何とか1時間で完食できた。

 病院内でのコミュニケーションは、主に筆談(含む電子メモ帳:ポメラ)+ジェスチャーであったが、看護士・主治医に質問・相談毎をする際にはポメラは有効であった。

病院内でのリハビリは、自己流の肩・首のストレッチと、EL(電気工頭)による発声訓練であった。

病院内で、オオルリ会が開催されたので参加してみた。オオルリ会では、食道発声・EL発声・シャント発声の方の発声とか経験談・相談に対する回答等が実施され、非常に有意義であった。

 

「退院〜シャント手術まで」

自分がシャント手術を実施するのは後2カ月後であり、それまでは容易に発声できるEL+筆談を使用して最低限のコミュニケーションとこの体に少しでも慣れる必要があった。

退院して、1ヶ月間はレンタルの吸引器+ネブライザーを使用していたが、その後は咳をする要領で痰を出している。

念のため吸引器とネブライザーは、持ち運びが容易なTYPEを選定した。

・吸引器      パワースマイル KS-700  + 充電器

・ネブライザー               NE-C30 + 充電器

  ELは、ユアトーンUとニューボイス試してみたが、ニューボイスの方が自分には合っていた。

頸部郭清術の後遺症で、両手が立った状態で床と水平まで上げる事が出来ない。及び肩も回せないし、首筋は鉄板が入っているような痺れというか違和感があった。

最初はベッドに寝た状態で手を上げたり、肩を回したりマッサージしていた。その後は鴨居とかにぶら下がったり、壁伝いに腕を上げたりするのが効果的であった。

 

「初めてシャント発声」

 シャント挿入手術を、0910月に実施した。 翌日の診察時は、まだ声が出せなかったが、2日目にプロボックスの清掃をしたら、何と声が出た。自分の声で、意思伝達できるのは非常なる感動であった。

 

「その後」

 手術後約8カ月経過したが、徐々にではあるが自分の体も新しい身体に順応しつつある。

・手が肩の上まで上げるのが困難だったのが、簡単にぐるぐる回せるようになった。これは、ストレッチとぶら下がり体操のおかげである。但し、首筋・肩の張った感じはまだまだ残っている。

・お風呂でのシャンプーは、いすの高さ約40cmの方が楽にシャワーで流せる。

シャワー時も、その間息を止めてHMEカセットを手で押さえていれば問題なく可能である。

・シャント手術後、歯磨き後とかのうがいができる。鼻がかめるようになった。こういう事が出来る事も、ストレス緩和の一因であるので重要である。

尚、鼻のかめない方は点鼻薬(水道水又は生理食塩水でOK)で鼻を定期的に洗浄した方が良いそうです。

・多少痰が少なくなった。それでもその日の体調にだいぶ左右されるが咳をして痰を出し、その後プロボックス用ブラシでプロボックスの穴と穴周辺を清掃し、ついでに嗽をしている。

・丸首シャツは、HMEカセットが当たるのと、痰がつきやすいのでV字シャツに替えた。色はグレーだと汚れが目立たないようである

・臭いは、意識して嗅がないとあまり感じることはない。しかしながら、タバコの臭いだけはとても敏感に感じる。

・食事の飲み込みと多少の液体漏れは、プロボックスの長さを12.5mmから1月に8mmに交換(これは主治医の手順で、最初の挿入品は長めにし、落ち着いてから(約3ヶ月後)最適長にするそうです。)以降全然問題なくなった。それまでは、食事中に飲み込めない事が多発しており、鼻から逆流したり口の中の食物いったん出して再度飲み込んだりしていた。

 ラーメンとか熱いものも、プロボックスを押さえてフウフウすれば割と問題無く食べることができる。

(多少周りの目が気にはなりますが?!)

・調子が良いと、割と会話がスムーズにできる。しかしながら、プロボックスの周りに痰とか唾が固着し、空腸の蠕動運動で、発声できない時も多々ある。こればっかりは、もう少し良くなってほしい最重要課題である。

その中でアドヒーシブの張り方とか、ラリーボタンからの空気漏れ防止対策が完璧だと、HMSカセットを押さえる力が少なく発声も容易な様に感じつつある。

・お酒は適度に節酒しているが、リラックス(飲酒時)している時の方が、発声は容易である感じがする。

心と体のストレスバランスを、如何に調整するかが問題である。

 

「悠声会に参加して」

・参加者は1010色であるが、その分いろんな情報が入手できるので大変有意義である。

・ボランティアで参加されている言語聴覚士の指導も受けられ毎回大変勇気づけられている。

・自分に比べ、あまりにも健常者と遜色ない人の会話を聞いていると、自分の会話の機会が少ないせいなのか?それとも時間が解決するのか?多少落ち込む事もある。

・今はヘルプミーだけであるが、その内、テークユーできるようになりたい!

 

「その他」

 自分の場合は、最初の胃カメラ検査で早期の食道癌が発見された。食道癌の除去はESD法で実施したが、日程的にプロボックスの挿入が先になってしまった。その結果、プロボックスがESD手術の障害物になってしまったそうで非常に苦労したそうです。これは、病院内の相談・連絡ミスであると消化器外科の先生がぼやいていました。 

 

生活補助具という事で拡声器を市役所に申請しに行ったところ、担当者は該当しないのでは?前例の有無を確認して後で回答する!という事であった。販売業者に確認し、前例の有無・時期をメールして貰い、やっと市役所の許可を得た。市役所は、どうしても前向きには対応してくれない事を実感した。

 

 先日の定期検診で主治医から、今後は2カ月に一回の検診と3カ月に1回のCT+血液検査と言われた。及び、プロボックスの交換も3カ月毎にしましょうとなった。

後、ついでに発声音の分析調査に協力してほしいということで音のサンプリングを実施してきた。その際に、声の質は非常に良いですね!

思いっきり息を吸って(イー〜)という発声も、10秒以上(15秒以上あった。)であり呼吸器系は問題ないです!会話は、慣れと空腸が動いた時の対処方法ですとフォローされた。

                                                                                                                20103月記