悠声会九州支部

 

悠声会九州支部第104回定例会報告

1 開催日時

令和5年8月20日(日)13時00分〜15時00分

2 開催場所

なみきスクエア 1階 第3多目的室

3 出席者

会員 5名   見学者 6名(家族3名、知人1名)
福岡山王病院言語聴覚士 1名  (株)アトスメディカルジャパン 2名  合計14名

4 進行係

Oさん司会進行のもとに進めました。

5 開催内容

○ 司会Oさん

 今月の定例会を始めます。
本日は3組の方が見学に来られていますので、簡単に自己紹介させていただきます。私は悠声会九州支部の支部長をさせていただいていますOと申します。13年前、55歳の時に下咽頭癌で喉頭摘出を行い、その2年後にプロヴォックスの手術をしました。プロヴォックスの手術をしたことで、私の人生は180度変わりました。この会に参加してくれている皆さんも、それは同じかと思います。1時間や2時間では語りつくせないほどの葛藤や喜びがたくさんあります。喉を取った時は絶望しかなかったです。術後は電気喉頭を使っていましたが、なかなか自分の意思が相手に伝わらず、なんで伝わらないのかと机を叩き怒り、家族に当たり、コミュニケーションが取れない事もありました。今ではこうして皆さんと会話を楽しむことができ、外出もできています。昔は気管孔を隠すためにエプロンを装着していましたが、今は隠すことなく生活をしています。これが僕らのスタンダード、何も隠すことはないですし、誰も気にしていません。それもひとつの個性だから気にしなくていいんだよ、と同じ病気をもつ仲間と毎月こうして集まり、お互いに情報交換をしたり交流をしています。本日はまずは通常通り近況報告や嗅覚訓練などいつもの悠声会の雰囲気をみていただき、そのあと見学の方から質問などあればお願いしたいと思います。

 近況としましては、相変わらずバイク仲間とツーリングを楽しんでいます。前回の定例会で、食生活を見直し、糖尿病の値が改善したとお話ししたかと思いますが、先日の検査では少し数値が悪くなっていました。原因はアイスの食べすぎだろうなと考えています。摂生しないといけないなと思っている今日この頃です。

○ 会員Fさん

 今年77歳です。手術をしてから7年くらいです。今のところ再発の可能性はゼロと、主治医からもお墨付きをいただき安心しています。私は病気がわかった時には既に病状がステージ4の状態でしたから、命が助かるのであれば声を失ってもいいと、喉頭摘出することを選択しました。もう喋ることができないと思っていましたが、先生からプロヴォックスの事を教えてもらい、喉頭摘出と同時にシャント手術も行いました。最初は指で直接気管孔を塞いで声を出していましたが面倒くさかったですし、声もあまり出ませんでしたね。人工鼻を使うと声が出しやすくなると教えてもらい、疑心暗鬼でアトスさんに説明に来てもらいました。悠声会の事もその時に教えてもらって参加をするようになり、皆さんやアトスさんに色々とアドバイスをもらいながら、今では人工鼻を使って問題なく喋ることができます。本日新しい方が見えていますが、人工鼻の利用価値はとてもあると思いますよ。痰の処理が面倒なときもありますが、調子がいいと1時間くらい続けて話すこともできます。人工鼻を使っている方は、これからも安心して使用されてください。そしてこれから手術をされるという方は、ぜひ安心して手術をされてくださいと伝えたいですね。術後肩に力が入らないのが難点ですが、私は今、それ以外不自由はしていません。

○ 会員Iさん

 皆さんお久しぶりです。私は9年前に喉頭摘出をし、8年前にプロヴォックスの手術をしました。喉頭摘出後は電気喉頭を使っていましたが、言葉のイントネーションもなく、悔しい思いもしました。悠声会を初めて見学した時に、すぐにプロヴォックスの手術をしようと決意しました。声は問題なく出すことはできていますが、私は喉頭摘出の際に空腸を移植しているので、癒着や捻転をしやすく、今年は3回緊急入院をしました。開腹手術もして、体重が5キロ減りました。だからこの夏はとてもきつかったです。だけど運動だけは続けています。先日運転免許の切換えがあり、片目が見えづらいですが視野もなんとかクリアしました。あとは違反しないように気を付けないといけませんね。

○ 会員Tさん

 今年で55になります。3年前に大阪へ単身赴任中に病気が見つかり、大阪で放射線治療をしました。治療が終わり会社にお願いをして福岡に帰りましたが、数か月後に検査をしたら再発していると言われ喉頭摘出をすることになりました。この病気について妻がネットで色々調べてくれて、プロヴォックスもそれで知りました。先生に相談して、喉頭摘出と同時にプロヴォックスの手術も受けました。私は長年営業の仕事をしており、喋ることが仕事ですから、急にこんなことになってきつかったです。術後に悠声会を知り参加するようになって、同じ仲間がいるというだけで凄く励まされましたね。会社はいい人ばかりで、今も営業の仕事を続けられています。できることは限られるけれど、やめたいと思った時、もう少し頑張ってと応援してくれて、自分を障がい者としてじゃなくて普通に接してくれるので、嬉しいです。

○ 会員Kさん

 皆さんお久しぶりです、3年ぶりくらいの参加です。今までずっと家籠りしてました。おかげでコロナにはかかりませんでした。私は73です。2008年に喉頭摘出をしました。3年程食道発声、電気喉頭で発声練習をしましたが、全然だめでした。2011年にプロヴォックスの手術をして、わりと簡単に声がでるようになりました。私は再建などしておらず、単純な喉頭摘出ですから声は出やすかったのだと思います。その気になればフリーハンズも使うことができます。声が出るのは人生が違ってきますね。会話ができること、とても恵まれているなと感じています。

○ 言語聴覚士S先生

 福岡山王病院で言語聴覚士をしています。喉頭摘出には色々な術式があります。喉頭がんで単純に喉頭を摘出された方、下咽頭がんで腸を再建された方では、プロヴォックスを入れた後の苦労は、それぞれ違ってくるかと思います。どれくらいの範囲を手術で摘出したのか、再建したのかでその人に合っている代用音声が違ったり、シャント発声も難易度が変わってきます。正直、どの術式にも対応できるのは電気喉頭かなとは思っていますが、プロヴォックスもそれほど術式を選ばず手術を受けることができます。この悠声会にはいろんな術式をされた方が参加されていますので、色々なケースのお話しを聞ける有意義な場だと思っています。もし医療従事者側の意見も聞きたいということがあれば、私の方に質問してもらっても大丈夫ですからね。

○ 司会Oさん

 皆さんありがとうございます。では、見学者の方は色々聞きたいことがあるかと思いますので、質問を考えていただきながら、まずはいつも通り体操や嗅覚訓練をやっていきましょう。

○ 言語聴覚士S先生

 → 準備運動・ストレッチを実施
 → 嗅覚訓練の実施 本日は、干し梅、するめいかの2種類で嗅覚訓練を実施

○ 司会Oさん

 前回アトスさんから人工鼻の使い方について教えてもらいましたが、今日もお願いできますか

○ アトスメディカル 看護師Sさん

 先月の定例会で、Fさんより気管孔周辺の肌荒れのご相談がありましたので、人工鼻、アドヒーシブの正しい使用手順についてご案内させていただきました。本日Fさんのお肌の状態がとてもきれいになっていて、安心いたしました。

○ 会員Fさん

 今までリムーバーを先に塗ってからシールを貼ってたんですよね。教えてもらったように使い方を変えたら肌がきれいになりましたよ。

○ アトスメディカル 看護師Sさん

 肌荒れなど気になる方いらっしゃいましたら、またいつでもお声がけください。本日は、プロヴォックスのメンテナンスについてご案内をさせていただきたいと思います。

→プロヴォックスメンテナンスに関する資料を皆様へ配布。正しいブラシの使い方と、フラッシュのご案内をする。

ブラシの使い方のポイント

  1. ブラシは毎日最低2回(起床時、就寝時)行う。できれば毎食後にも行う。
  2. ブラシはストッパー部分まで挿入し、前後に優しく動かし、ブラシの先に汚れが何もつかなくなるまで繰り返し行う。
  3. ブラシに角度をつける際には、必ず青い柄の部分を折り曲げる。

Q1:ブラシがストッパーまで入らない人はどうしたらいいですか。

A1:食道壁に当たっているかと思いますので無理にストッパーまで入れず、入るところまでで大丈夫です。

会員Oさん:自分も昔あったのですが、肉芽の可能性もありますよね。
 → 肉芽の場合ブラシに血液が付着することがあるかと思いますので、その際は主治医へご相談ください。

Q2:ブラシの使用後に水に着けた状態で保管していますが大丈夫ですか。

A2:水に着けた状態だと菌が繁殖してしまいますので、洗浄後はしっかり乾燥させて保管ください。

Q3:ブラシはどれくらいで交換が必要ですか

A3:できれば1か月で交換してください。

→ 皆さんが実践しているブラシ以外のメンテナンス方法

  • 食後は水分を飲み、食道側のプロヴォックスに汚れが付かないよう流しこむ
  • 空腸再建だと、喉元の蛇行した部分に食物が溜まりやすいため、喉を掴んで揺すったり、ジャンプすると食物が下に落ちやすい
  • 食後にうがいをする
  • 声を出して、空気圧でプロヴォックス内の汚れを取る

○ 司会Oさん

 ありがとうございました。では、見学に来られた方から質問がありましたらお願いします。

○ 見学Oさん(2023年7月プロヴォックス留置)

 7月にプロヴォックスの手術をしました。まだ慣れてなくて上手く喋れる時と、そうじゃない時があります。質問なのですが、皆さんは食事の時や食後はすぐに喋ることができますか?あと、お酒は皆さん飲んでいますか?私は先生からお酒は止められています。

会員の皆様:

とてもお上手にお声出ていますよ。発声のコツは早く喋ろうとしないことです。ゆっくり、細かく文節で区切って話すといいですよ。あとは人工鼻を強く押して声を張り上げようとせず、軽く押すくらいがいいかと思います。食事の時には漏れの心配もあるので、あまり喋らない方がいいかと思います。また食後すぐは、食道に食べ物が下に落ちずに溜まった状態のこともよくあると思うので、少し時間を空けたり、水で流し込むとか、うがいをしてからがいいですよ。
お酒はみんなたしなむ程度に飲んでますよ。ただ、この癌はタバコや酒が原因のことがほとんどなので、先生の言う事を聞くのが一番ですね。

○ 見学Kさん(喉頭気管分離およびプロヴォックス留置検討中)

 主人が脳梗塞の後遺症で麻痺があり、食事の嚥下が難しい状況のため喉頭気管分離術とプロヴォックスの留置を検討中です。全国的にシャント手術をされる方が少ないのは何か理由があるんですか?また脳梗塞の方でプロヴォックスを入れられる割合はどれくらいいますか?

○ アトスメディカル Sさん

 国内で喉頭摘出患者に対しプロヴォックス留置の手術が少ないのは、医療費の問題があるかと思います。普及率の高いオランダなどではプロヴォックス留置や交換に伴う医療費の負担が無いため、シャント手術をされる方は多くいらっしゃいます。日本ではプロヴォックスの留置から交換、人工鼻の費用など多くの費用がかかってしまいます。
誤嚥防止手術の方にプロヴォックスを入れる手術は、全国で福岡山王病院が先駆けで行っており、症例数としてはとても少ないかと思います。

○ 言語聴覚士Sさん

 そもそも誤嚥防止手術を行うような患者さんは、脳疾患術後などで上肢の自由が利かない、認知機能などの問題でプロヴォックス留置の適応となることがとても少ないです。

〇 見学Kさん(空腸再建にて喉頭摘出、プロヴォックス留置検討中)

 私は空腸再建をしているのですが、頻繁にイレウスを起こし、嘔吐をすることもあります。プロヴォックスを入れた場合、イレウスで嘔吐をした時に誤嚥の心配があります。

○ 言語聴覚士Sさん

 やはり嘔吐での誤嚥の心配というのは、少なからずあるかとは思います。ただ、プロヴォックスを入れるメリットはすごくたくさんあると思いますので、メリットやデメリットをしっかりご理解いただいた上でご検討いただけたらいいかと思います。

○ 見学Kさん

 実は今日ここに来るまでは、空腸再建している人がシャント手術してもあまり声は出すことができないと聞いていたのでとても悩んでいました。ですが、今日皆さんの声を聞くことができてとても勇気が出ました。本当にありがとうございました。来年記念行事でスピーチをする機会があるので、自分の声で話をしたいと考えているんです。

○ 司会Oさん

 遊離空腸の人は私も含めて今日は3人参加してますね。ですが、喉頭を摘出された方全体でみると遊離空腸の方はとても多いですよ。私も以前はKさんと同じく電気喉頭使っていましたが、電池が切れてしまうのが難点なんですものね。スピーチ、すごいですね。ぜひ頑張ってください。
 それでは、本日の定例会は以上となります。皆さんありがとうございました。
本日見学に来られた方も、毎月定例会を行っておりますので、ぜひお越しください。

※ 次回は 9月3日 13時00分 〜 15時00分
  場所はなみきスクエア 1階 第2多目的室です。